◇韓日美術交流展に期待する◇

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秋田県大館市、花岡の地日中不再戦友好の碑を守る会22名の市民を迎え光州市立美術館主催河正雄コレクション「人類の遺産木彫連作版画『花岡ものがたり』展」(会期2004年5月11日〜8月25日)を開催した。開幕式を終えて2014年世界海洋博を計画している全羅南道麗水市で開かれている全羅南道体育祭に参席した。
 そこで5月15日付読売新聞のコラム「編集手帳」を読んだ。北朝鮮を再度訪問する小泉首相への要望と、日本側の対応に対する記事である。北朝鮮の不誠実な態度に、ことが人命人権に関わる問題だから譲るもの、あげるものは何もない。「あげる」を知らない、出すことならば舌を出すのもいや、取ることならば地蔵の胸ぐらでも取る、北朝鮮を見習えという趣旨であった。この内容に今更ながら北朝鮮と日本との深い溝のようなものを見せつけられたように感じ、私は戸惑いを感じた。前日、日本美術会の木村勝時氏から国際電話で原稿を依頼されていたので、そのコラムの表現が気に懸かった。
 それは2003年末日本美術会から届けられた韓日美術交流招待展感想文集を読んでいたからだ。そこには光州側の歓迎と度の過ぎた接待に対する戸惑いと、それに対するお返しの心配が綴られていた。そして光州側の作家達は、大学教授などが多かったので肩書きに拘っているような印象を私は得た。この文集を読んだ時も、韓日の溝のようなものを感じ気に懸かっていたからだ。
 日本美術会の趣旨には人類の生存を脅かす核兵器廃絶、戦争と侵略を止めさせ、ファシズムを防ぎ、表現の自由と世界平和を作るために努力するとあった。日本美術会はこの理念を貫き、小泉首相は平壌宣言で相手に対する認識と真の友好、交流に深めていくべきである。それには互いの体面や主張には拘らぬ事が肝要であり、それが互いの溝を取り払う方法ではないか。両記事を読んで私は、そう感じた。
 私が光州での交流展を見たのは最終日であった。会場の南道芸術会館正面壁面には巨大な日章旗と太極旗が掲げられ、度肝を抜かされた。反日感情の強い光州で、光州市民のシンボルである5・18光州民衆抗争の主戦場であった全羅道庁前に両国国旗が掲げられているのを初めて見たからだ。
 その時、韓国側の素早く時を見る姿勢と対応に反応すべきであると思った。国民性の違い、言葉の壁を乗り越え共通認識と理解を構築、真の友好親善交流を深めることが必要である。それこそが交流展における両国双方の使命、本筋であるべきだ。
 交流展会場で光州側の主催者、林炳星画伯と話をする機会を得た。その時広沢虎造の浪花節、森の石松がとても好きで面白いと、その一節をうなった。また奈良漬けが食べたいと日本への郷愁をも語り、交流展の成功を心から喜んでいたのが印象的であった。両国民がキムチを食べ、奈良漬けを食べ、食から文化から垣根をなくして仲良くしていくことは実に良いことである。 
 交流展を見た感想を言うならば日本側の出品作には、まとまりと意気込みがあり質的にも個性を感じた。光州側の出品作は、お付き合いのようなサロン的作品が多くあり、今一つ物足りなさを感じた。その事を率直に述べたところ、林画伯は「残念なことだ、課題である」と述べた。今年の交流展はどんな展開になるか楽しみである。
(美術運動 No.132 2004年6月号)

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