◇藤棚のある席で◇

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こうして10月30日、野外の藤棚のある席で、光州ビエンナーレ記念韓日親善交流茶会が開かれることとなった。一昨日光州空港に歓迎出迎えに見えた光州市の三愛茶会の方々やビエンナーレ幹部たちが見えられ、道行く人が立ちどまってめずらしそうに見物してゆく。
 私に一番手の野点の一服をご馳走するとのこと。宇治の玉露である。涼炉は備前、宝瓶は柿右衛門、茶碗は竹泉京焼。干菓子は京菓子。日本から持ち込んだ道具の一つ一つに並々ならぬ熱意のほどが感じられる接遇である。
 飲み干して何ともすがすがしい心地がして、往時の文人墨客の境地もかくやと、煎茶の世界を満喫した気分であった。きっと在日二世の禹さんの熱い心と思いが実感として通じたのだと思えてならない。
「私は、祖国韓国を知らずに育ちました。しかしこうしてお茶を通して祖国の人々に記念すべきビエンナーレで一服のお点前を差し上げられることは何よりの光栄であり喜びです。やはり私は韓国人だからなのでしょう、血が熱くなりました。お茶を通して韓日の人々が近くなることを、在日二世として祈っております。」
 なんとやさしい素朴な思いであろうか。とても小規模な企画であったが、境界を越えたこの日韓親善茶会の実現と成功を、私は禹さんとともに喜びたい。 茶は日本の人々と日常もっとも身近に接することの出来るものであろう。在日の人々の生き方も、日本人の社会で親しく茶会を通じて、その精神世界でともに遊び学んでほしいと思った。

 組織委員会の方から、これもビエンナーレの大切な一部なのだといって賞賛されたことは、思いがけぬ喜びであった。